私道のみに面した土地の評価|再建築不可か調べる3つのステップ

私道

私道のみに面した土地であっても、再建築が可能であれば、公道に面した土地と同様の価格で取引される場合もあります。

ただ、私道は種類が多く複雑な事情が絡んでくるため「建築できそうだから価値が高い」と短絡的に考える事はできません。たんねんに「私道の種類・現状は?」「どのような条件で建築が可能になるか?」「私道の利用に当たって費用は発生するか?」などの条件を整理する必要があります。

もし「これは手に負えない」となった場合、実は相談できる専門家が少ないことも悩みの種。弁護士さんは費用が高すぎますし、土地家屋調査士さんの専門外。不動産会社の宅建士は専門領域ですが、一般に相談のみを受け付けていません。

当社および協力各社では「不動産セカンドオピニオン」を受け付けており、私道の調査について対応できる場合もあります。初回ご相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。

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私道のみに面した土地の価値を決める再建築の可否

私道に面した土地の価値は、将来その土地に建物を新しく建てたり、建て替えたりできるかどうかで大きく変わります。

この「再建築の可否」が、資産価値や売却のしやすさを左右する最も重要なポイントです。

ご自身の土地が将来も価値を維持できるか見極めるために、まずは建築に関するルールと、私道が持つ特性を正しく理解することから始めましょう。

建築の可否を左右する接道義務の基本

接道義務とは、建物を建てる敷地は「幅4m以上の道路」に「2m以上」接していなければならないという、建築基準法で定められたルールです。

この決まりは、火災時の消防活動や救急車の進入路を確保し、安全で快適な街並みを維持するために設けられています。

たとえ広い土地であっても、この接道義務を満たさない場合は「再建築不可」となり、原則として新しい建物を建てることができなくなります

この一点が、土地の価値を大きく左右するのです。

私道に面している場合、その私道がこの「幅4m以上の道路」として法律上認められているかどうかが、最初の関門になります。

建て替えできない再建築不可物件のリスク

再建築不可物件とは、その名の通り、現存する建物を取り壊して新しい建物を建てることができない土地のことです。

接道義務を満たしていない土地などがこれに該当します。

最大のリスクは資産価値が著しく低くなる点です。

新しい家が建てられないため、住宅ローンの審査が非常に厳しくなり、ほとんどの金融機関で融資を受けることができません

これにより、一般の買い手を見つけるのは困難を極めます。

相続などで取得した場合、活用も売却もできず、税金だけを払い続ける「負動産」になってしまう可能性があるため、早期の状況把握が不可欠です。

私道と公道の根本的な違い

私道(しどう)とは、個人や法人が所有・管理する道のことです。

これに対して、国や都道府県、市区町村が所有・管理する道を公道(こうどう)と呼びます。

最も大きな違いは「所有者」です。

公道は誰もが自由に通行できますが、私道はあくまで私有地であるため、所有者の意向によっては通行が制限されたり、水道管などの掘削工事に承諾や承諾料が必要になったりするケースがあります

見た目は同じような道でも、法律上の扱いや権利関係が全く異なるため、土地に接している道が私道なのか公道なのかを把握することは、不動産取引の基本といえます。

将来を左右する建築基準法上の道路

見た目が道路であっても、建築基準法という法律で「道路」として認められていなければ、接道義務を満たせません。

この建築基準法上の道路に該当するかどうかが、再建築できるか否かの分かれ道となります。

建築基準法第42条には、道路の定義が定められています。

例えば、特定行政庁から位置の指定を受けて造られた「位置指定道路」や、1950年11月23日の建築基準法施行前から存在した幅員4m以上の道なども、法律上の道路として扱われます。

ご自身の土地が接している私道がこれらのいずれかに該当すれば、再建築できる可能性が大きく高まります。

次のステップで、具体的な調査方法を確認していきましょう。

【ステップ1】再建築不可か調べるための調査と確認事項

ご自身の土地に家を建てられるかどうか、まず最初に確認すべき最も重要なことは、その土地が面している私道が、建築基準法上の「道路」として認められているかという点です。

法律上の道路でなければ、原則として建物の建築や建て替えはできません。

このステップでは、将来を左右する重要な調査項目を一つひとつ確認していきましょう。

役所の建築指導課での道路種別の調査

まず最初に行うべきは、役所での調査です。

道路種別とは、その道が建築基準法という法律で定められた「道路」に該当するかどうかを示す分類のことです。

お住まいの市区町村の役所にある建築指導課(自治体によって名称は異なります)の窓口で、対象の土地の地番を伝えれば、その土地が接している道路の種類を教えてもらえます。

この調査によって、「位置指定道路」や「42条2項道路」などに該当することがわかれば、再建築できる可能性が大きく高まります。

この道路種別の確認が、全ての調査の出発点となります。

セットバックが必要となる42条2項道路

役所の調査で、面している道が「42条2項道路」と判明することがあります。

これは「みなし道路」とも呼ばれ、建築基準法が施行された1950年11月23日より前から建物が立ち並んでいた、幅員4m未満の道を指します。

この道路に面した土地で建て替えを行う場合、「セットバック」というルールに従う必要があります。

これは、道路の中心線から2mの位置まで自分の敷地を後退させ、道路の幅員を4m確保するためのものです。

後退させた部分は道路と見なされるため、ブロック塀を設置したり駐車場として利用したりすることはできなくなります。

セットバックによって敷地面積は実質的に減少しますが、これを守ることで建て替えが可能になります。

特定行政庁が指定する位置指定道路

「位置指定道路」も、役所の調査で判明する道路種別の一つです。

正式には「42条1項5号道路」といい、土地を宅地として開発する際に、法律に基づいて造られ、行政から「ここが道路です」と指定を受けた私道を指します。

この道路は、建築基準法上の道路として正式に認められています。

幅員も原則として4m以上確保されているため、セットバックの必要はありません。

ご自身の土地がこの位置指定道路に2m以上接していれば、接道義務の条件を満たし、問題なく建物の建築や建て替えを行うことができます。

法務局での私道の権利形態と私道持分の有無の確認

道路の種類とあわせて、その私道を誰が所有しているのかという権利関係の確認も不可欠です。

私道持分とは、私道全体を複数人で共有している場合の、各自の所有権の割合のことです。

この権利関係は、法務局で私道の登記簿謄本(登記事項証明書)を取得することで確認できます。

所有形態によって、将来建て替えや売却を行う際のハードルが大きく変わってきます。

特に、自分に「私道持分なし」のケースでは、通行や工事の際に所有者の承諾を得るのが難航する場合があります。

ご自身の土地の権利状況を正確に把握しておくことが、将来のトラブルを未然に防ぐ第一歩です。

通行権や掘削工事の承諾に関する事前確認

私道持分がない場合や、他人が所有する私道を通らなければ公道に出られない場合は、通行権の確認が重要になります。

通行権とは、他人の土地である私道を通行するための権利のことです。

また、建て替え時には上下水道やガス管の引き込み工事で私道を掘削する必要があります。

この際にも、私道所有者全員からの「掘削工事の承諾書」が必要となるケースがほとんどです。

口約束だけでは後々のトラブルの原因になりますので、必ず書面で承諾を得ておくことが大切です。

これらの承諾が得られないと、売却しようとしても買い手が見つからなかったり、資産価値が大きく下がってしまったりする原因になります。

水道管やガス管など生活インフラの埋設状況

最後に、目には見えない地面の下の状況も確認が必要です。

生活インフラとは、私たちの生活に欠かせない水道、ガス、下水などの配管設備のことです。

これらの配管が私道部分に埋設されている場合、その所有権が誰にあるのか、また配管が古くなっていないかを事前に調べておく必要があります。

調査は、地域の水道局やガス会社に問い合わせることで行えます。

もし配管が古く、交換が必要になった場合、私道を掘削するために所有者全員の承諾や、高額な工事費用が必要になる可能性も考慮しておきましょう。

【ステップ2】土地の相続税評価額を算出する2つの方法

私道のみに面した土地の相続税を計算する際、その道路には税額の基準となる「路線価」が設定されていないケースが多くあります。

そのため、特別な方法で評価額を算出する必要があり、どの方法を選ぶかによって相続税額が大きく変わることを知っておくのが重要です。

どちらの方法にも一長一短があり、安易に評価額が低くなる方法を選ぶと、税務調査で指摘されるリスクも伴います。

土地の状況に合わせて、慎重に評価方法を検討することが大切です。

相続税路線価がない場合の特定路線価の申請

「特定路線価」とは、相続税路線価が定められていない道路に面している土地の評価のために、納税者の申出に基づき、税務署長が個別に設定する路線価のことです。

行き止まりの私道などは、不特定多数が利用する道路ではないため、通常の路線価が設定されていません。

この制度を利用するには、所轄の税務署へ「特定路線価設定申出書」を提出します。

申請は義務ではありませんが、この方法で設定された価額は税務署が認めた公的な評価額となるため、申告の際に信頼性が高いのが利点です。

ただし、一般的に後述する旗竿地評価よりも評価額は高くなる傾向があります。

実態に合わせた評価額を算出し、安心して相続税の申告手続きを進めたい場合に有効な方法です。

私道と一体で評価する旗竿地としての計算方法

もう一つの評価方法が、私道部分と奥にある宅地部分を一体の「旗竿地(はたざおち)」と見なして計算する方法です。

旗竿地とは、その名の通り、細い通路(竿)の先に開けた土地(旗)がある形状の土地を指します。

この方法では、通路部分があることで土地全体の形状が不整形と判断されるため、土地の使いにくさを考慮した「不整形地補正」という減額補正が適用され、評価額が低くなる傾向があります。

ただし、特定路線価による評価額と比べてあまりにも低い価額で申告すると、税務調査の対象となり、評価方法を否認されるリスクもゼロではありません。

評価額を抑えやすいというメリットはありますが、その評価額が妥当であるか、専門家の意見も聞きながら慎重に判断することが求められます。

私道部分の固定資産税が減免されるケースの確認

土地を所有していると毎年かかる固定資産税ですが、私道部分については、その利用状況によって税金が減額または免除される制度があります。

具体的には、その私道が「公共の用に供する道路」として、所有者以外の人でも自由に通行できる状態になっている場合に対象となります。

例えば、通り抜けができる私道や、複数の住民が日常的に利用している道路などが該当します。

この減免措置を受けるには、土地が所在する市区町村の役所(資産税課など)への申請が必要です。

申請手続きや減免の条件は自治体によって異なります。

ご自身の私道が対象になるか不明な場合は、一度役所の担当窓口に問い合わせてみることをお勧めします。

【ステップ3】再建築不可だった場合の売却と対処法

調査の結果、残念ながらご所有の土地が再建築不可だと判明しても、決して諦める必要はありません。

売却や活用の道は残されています。

重要なのは、その土地の状況に合わせた適切な売却先や対処法を見つけることです。

それぞれの方法には一長一短がありますので、ご自身の状況に合わせて最適な選択をすることが大切です。

隣地の所有者への売却交渉

隣地の所有者にとって、あなたの土地は自身の土地と合わせることで価値を高められる可能性があります。

そのため、有力な売却先の候補となります。

例えば、隣地も敷地が狭かったり、より大きな建物を建てたいと考えていたりする場合、あなたの土地を購入することで土地全体の利便性が向上します。

このようなケースでは、相場に近い価格、あるいはそれ以上での売却も期待できます。

交渉の際は、相手にとってどのようなメリットがあるのかを伝えることが成功の鍵を握ります。

個人間の交渉はトラブルに発展する可能性も考慮し、不動産会社に仲介を依頼すると安心です。

まずは専門家へ相談しながら、隣地の所有者へ売却を打診してみる価値は十分にあります。

専門の買取業者への売却相談

再建築不可物件の売却で、最も現実的な選択肢となるのが専門の買取業者への相談です。

再建築不可物件など、一般の市場では売却が難しい不動産を専門に買い取っている不動産会社を指します。

買取業者は、物件をリフォームして賃貸物件として収益化したり、周辺の土地も買い集めて再開発したりする独自のノウハウを持っています。

そのため、一般の買い手が見つからない物件でも、最短で数日から1週間程度で現状のまま買い取ってもらえるのが最大のメリットです。

面倒な手続きや交渉の手間を省き、迅速に現金化できます。

売却価格は市場価格の7割程度が目安となりますが、固定資産税を払い続ける負担や、売れ残るリスクを考えれば、有効な選択肢と言えるでしょう。

想定される私道共有のトラブルと回避策

私道に面した土地は、道路の維持管理や利用方法をめぐって、他の共有者とトラブルになることがあります。

売却や建て替えを考える際には、こうしたリスクを事前に把握し、対策を講じておくことが重要です。

特に、建て替え工事やインフラ工事で私道を掘削する際には、私道共有者全員の同意が必要になるケースがほとんどです。

一人でも反対する人がいると、計画が頓挫してしまう恐れがあります。

将来の安心のためにも、共有者間のルールを明確にし、通行承諾書などの必要な書類を書面で取り交わしておくことが、トラブルを未然に防ぐ上で不可欠です。

例外的に建築許可を得るための43条2項2号認定

原則として再建築不可の土地でも、例外的に建築許可を得られる可能性があります。

それが、建築基準法第43条2項2号の規定に基づく認定制度です。

以前は「43条ただし書き許可」と呼ばれていました。

この認定を受けるためには、主に「敷地の周囲に公園などの広い空き地があること」と、「特定行政庁が交通上、安全上、防火上、衛生上支障がないと認めること」という2つの条件を満たす必要があります。

基準の詳細は各自治体によって異なるため、まずは役所の建築指導課の窓口で相談することから始めます。

認定を受けるためのハードルは決して低くありませんが、もし認められれば土地の価値は大きく向上します。

再建築を諦める前に、このような救済措置があることも覚えておきましょう。

まとめ「私道のみに面した土地の評価方法」

私道のみに面した土地は、そのままでは建築や建て替えができない可能性があるため、慎重な調査と判断が必要です。

特に「接道義務」を満たしているかどうかが再建築の可否を左右し、これは資産価値や売却のしやすさにも直結します。

土地に接している私道が建築基準法上の道路に該当するか、持分の有無や通行権、掘削承諾の状況まで確認することが重要です。また、相続税評価や固定資産税にも影響するため、正確な評価方法の選定も欠かせません。

しかし万が一、再建築不可であっても、隣地への売却や専門業者への相談、43条2項2号認定の取得など、有効な対処法があります。この記事の内容を理解しておくことで、将来的なトラブルや損失を回避し、土地の活用や売却において有利な判断ができるようになります。

ただし、私道の調査は複雑な要件を整理し、慎重に進める必要があります。「わからない」となったら、専門業者に相談してみてはどうでしょう?

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