私道に面した物件のリスクは多岐にわたるように見えますが、実務で問題になるのは主に次の5点です。
- 通行・掘削でトラブルになるか
- 将来、建替えができるか(再建築可否)
- 住宅ローンが組めるか
- 将来、売却できるか
- 水道・下水・ガスの引き込みに問題はないか
まず、どれが未解決かを把握することが先決です。①~⑤のすべてに問題がなければ、前向きに検討してよいと考えられます。
一方、どれか一つでも曖昧なまま契約するのは危険といえるでしょう。
各リスクの詳細については「私道共有持分とは|5つのトラブル事例と民法改正後の対処法」で解説しています。

よい私道物件と避けたい私道物件

物件を前にして「買ってよいか」「所有し続けてもいいか」を判断する場合は、次のチェックリストを活用してください。
確認できれば安心できる項目
- 位置指定道路など(建築基準法上の道路)に該当する
- 私道持分がある、または通行・掘削の承諾書が取得されている
- 再建築可(建築確認が取れる状態)である
- 埋設管が公設である、または私設管への接続承諾が取れている
慎重に検討したい項目
- 持分なし・かつ承諾書もない
- 43条ただし書き(再建築のたびに特定行政庁の許可が必要)の要件
- 私道の所有者が、利用者とは別の第三者である
- 埋設管が単独の私設管で、所有者の承諾が不明である
筆者が実際に経験したケースでは、「43条ただし書き」の許可を得て建築した物件を購入した方が、建替え時の許可申請に想定外の費用と時間がかかり、後悔されていたことがあります。この点、法令が変わることもあるので注意が必要でしょう。
「現況では住める」という事実と、「将来も建替えられる」という保証は別の話です。
見送りを検討したい項目
- 建築基準法上の道路に非該当(再建築不可)
- 通行・掘削の承諾がまったく取れない状況
- 私道所有者が所在不明、または相続登記が未了のまま
再建築不可の物件は、住むこと自体はできても、将来の売却・担保設定・建替えには大幅な制約があります。「安く買えた」メリットが、長い目で見ると帳消しになるケースも少なくありません。
→ 私道のみに面した土地の評価|再建築不可か調べる3つのステップ → 通行地役権とは|時効取得から囲繞地通行権との違いまで完全ガイド


私道の調査手順(プロはこの手順で調査します)

ここでは「何を調べれば安心できるか」の全体像を示します。調査は現地・法務局・役所・各インフラ会社の4ステップで行います。
詳しくは関連記事で、じっくりと解説していきます。
ステップ①:現地調査
まず現地で目視・実測します。確認するのは次の点です。
- 道路幅員をメジャーで実測する(図面と異なる場合があります)
- 私道入口付近に「私有地につき通行禁止」などの看板がないか確認する
- 門扉・カーポート・フェンスなど、通行の障害になるものがないか確認する
- 排水側溝の状態(ゴミの詰まり・ひび割れ・沈下)を目視する
- マンホールの蓋・電柱の位置を確認・撮影する
※現地調査の詳細手順については準備中です。
ステップ②:法務局で権利関係を確認する
法務局(登記所)で次の書類を取得・確認します。
- 公図:私道部分の形状・隣接地との位置関係を確認する
- 地積測量図:私道部分の面積・間口を確認する(存在しない場合もあります)
- 登記事項証明書(全部事項):私道の所有者・共有者・地役権・抵当権の有無を確認する
地番が不明な場合は、法務局備え付けの地番図で調べてから申請します。取得はいずれも有料です。
→ 私道と公道の見分け方|Googleマップで分かるはウソです

※公図の見方・登記事項証明書の見方については準備中です。
ステップ③:役所で道路種別を確認する
市区町村の建築指導課(名称は自治体により異なります)で、対象の私道が建築基準法上のどの種別に該当するかを確認します。
この時、確認したい内容は次の2点です。
- その道路は建築基準法上の「道路」に該当するか
- 該当する場合、何条何項の道路か(位置指定道路であれば指定図も取得する)
→ 建築基準法上の道路の調べ方|2つの調査方法と6つの道路種別 → 位置指定道路とは何かをわかりやすく解説|調査方法と注意点 → 二項道路(みなし道路)とは?建築不可となる理由と対策から役所調査法まで

ステップ④:水道・下水・ガスの埋設管を調査する
私道の地下に何が埋まっているかは、現地を見るだけでは分かりません。以下の問い合わせ先・役所窓口で確認します。
- 水道管:水道局または市区町村の担当窓口(なるべく配管図面をもらっておきます)
- 下水管:役所の下水道課(分流式か合流式か、私道への接続状況を確認します)
- ガス管:都市ガス会社(FAXで調査依頼書を送ると翌日程度で回答を得られる場合があります)
私設管(所有者が個人・自治会等)の場合は、その所有者への承諾取得が別途必要になります。
※水道管・下水管・ガス管の調査手順詳細については準備中です。
道路の「種類」を知る(建築基準法の分類)

私道に面した物件の再建築可否は、その道路が「建築基準法上のどの道路か」によって決まります。主な種別は次の通りです。
42条1項1号道路(公道) 国道・都道府県道・市区町村道。最も問題が少ない種別です。
42条1項3号道路(既存道路) 建築基準法施行時(昭和25年)にすでに存在していた道。現在も幅員4m以上あれば建築可です。
→ 既存道路とは|建築基準法42条1項3号道路の定義と調査方法

42条1項5号道路(位置指定道路) 民間が造成した私道のうち、特定行政庁から「道路位置の指定」を受けたもの。住宅地の私道で最も多い種別です。
→ 位置指定道路とは何かをわかりやすく解説|調査方法と注意点

42条2項道路(二項道路・みなし道路) 幅員4m未満だが、建築基準法施行時に建物が立ち並んでいたとして、特定行政庁が指定した道。建替え時にセットバック(後退)が必要です。
→ 二項道路(みなし道路)とは?建築不可となる理由と対策から役所調査法まで → 二項道路ではセットバックが必要。その理由と費用負担 → 幅1.8m未満の二項道路は再建築不可?その理由と対策方法を解説
43条ただし書き(接道義務の例外) 建築基準法上の道路に接していない敷地でも、特定行政庁の許可によって建築を認める制度。建替えのたびに許可申請が必要で、許可が下りない場合は再建築できません。
→ 接道義務とは|建築基準法の要件2つと建て替えできない時の3つの救済措置

持分・覚書・承諾書(これがないと困る場合があります)

「持分がある」「承諾書がある」という言葉は不動産の現場でよく出てきますが、それが「ない」と具体的に何が困るのかを整理します。
私道持分がない場合 売却時に「持分がないなら値引きを」と求められるケースが多く、担保評価が下がって住宅ローンが通りにくくなる場合があります。また、売れたとしても、次の買主が同じ不安を抱えることになります。
通行承諾がない場合 法的には囲繞地通行権(民法210条)や地役権によって通行できる場合もありますが、争いになれば費用と時間がかかります。承諾書が取れていれば、そのリスクはほぼ解消されます。
→ 通行地役権とは|時効取得から囲繞地通行権との違いまで完全ガイド → 通行地役権の時効取得|認められるための4つの要件と手続きを解説

掘削承諾がない場合 建替え時や給排水管の引き替え工事の際、私道を掘削するために私道所有者の承諾が必要です。これが取れないと、水道・ガス工事ができず、実質的に建替えが不可能になる場合があります。
→ 民法改正で私道持分なしでも工事可能?|インフラ設置の3つの要点

なお、覚書・承諾書は一度締結したら原則として書き直しはできません。実印での締結と印鑑登録証明書の添付を双方で行い、大切に保管してください。
※覚書・掘削承諾書の書式・参考例については準備中です。
私道の税金(知らないとソンをするポイントです)

私道も土地(固定資産)ですから、原則として税金がかかります。ただし、条件を満たせば非課税になるケースがあります。
固定資産税 「不特定多数の人が自由に通行できる私道」と認められれば、申請により非課税になる場合があります(地方税法348条2項5号)。対象かどうかは市区町村の資産税課に確認してください。未分筆の私道でも、面積を証明する書面(地積測量図等)があれば対応してくれる自治体もあります。
都市計画税・不動産取得税 固定資産税と同様の考え方で、非課税になるケースがあります。
相続時の評価
- 不特定多数が通行する私道:評価額はゼロ
- 特定の人だけが通行する私道:通常の評価額の30%相当
※私道の税金(固定資産税・都市計画税・不動産取得税)の詳細記事については準備中です。
「この私道物件は大丈夫?」を確認したい方へ

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