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通行地役権の時効取得|認められるための4つの要件と手続きを解説

トラブル対策

長年利用してきた通路を新しい地主から突然ふさがれる。

そんなケースもあります。

しかし、たとえ口約束しかなくても、自分の費用で通路を開設・維持してきた客観的な事実があれば、通行地役権を時効取得によって法的に主張できるかもしれません。

この記事では、通行地役権の時効取得に不可欠な4つの要件から、権利を主張するための具体的な手続きまで、判例を交えて詳しく解説します。

特に、時効取得が認められるケースと認められないケースを比較することで、自分自身の状況に照らして、権利を主張できるか判断できることを目指して記事を作成しました。

大切な生活を守るため、まずは正しい知識を身につけましょう。

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通行地役権の時効取得、その可能性と根拠

長年利用してきた通路の通行を突然拒否されることがあります。

しかし、一定の条件を満たしていれば、その通路を通行する権利、すなわち通行地役権を時効によって取得できる可能性も。

ここで最も重要なのは、自分の費用と労力で通路を開設し、維持管理してきたという客観的な事実です。

この事実を法律や判例に照らし合わせることで、正当に権利を主張する道筋が見えてきます。

自分で通路を開設・維持してきた事実の重要性

しかし、ただ単に長年そこを通っていたというだけでは権利として認められません。

例えば、30年以上にわたり、ご自身の費用で砂利を敷いたり、定期的に草刈りをしたり、アスファルトで舗装したりといった行為を継続してきた事実が、権利を主張する上での重要な根拠となります。

土地の所有者に任せきりにするのではなく、主体的に通路の維持管理に関わってきたかどうかが、判断の分かれ目となります。

結論として、自分が所有する土地(要役地)の利便性を高めるために、他人の土地(承役地)に経済的な負担をかけて通路を維持してきたという客観的な事実こそが、時効取得を認めてもらうための大切な要素です。

時効取得の根拠となる民法の規定

通行地役権を時効で取得できるという主張は、感情論ではなく、民法第162条に定められた「取得時効」という制度に基づいています。

この制度は、所有の意思をもって、平穏に、かつ、公然と他人の物を占有した者は、一定期間の経過によってその権利を取得するというものです。

つまり、長年にわたって権利があるかのような状態が続いてきた場合、その事実状態を尊重し、法律上の権利として認めようというのが民法の考え方です。

通行地役権もこの取得時効の対象となるため、要件を満たせば、たとえ土地の所有者が変わったとしても、正当な権利として主張できます。

判例で重視される「継続」と「表現」の意味

通行地役権の時効取得を考える上で、民法第283条が定める「継続」と「表現」という2つの要件を理解することが不可欠です。

過去の判例では、この2つの要件が満たされているかどうかが厳しく判断されます。

具体的には、「表現」とは、誰が見てもわかるように通路が物理的に存在することを指し、「継続」とは、その通路を通行する人が自ら維持管理している状態を指します。

つまり、人の手によって通路が作られ、それが通行者の労力や費用によって保たれているという客観的な事実が求められるのです。

この「継続」と「表現」の2つの要件を満たしていることを客観的な証拠で示すことが、時効取得を認めてもらうための重要な鍵となります。

時効取得に必要な期間、原則20年と例外の10年

時効取得が認められるためには、権利の行使が一定期間継続している必要があります。

この期間は、原則として20年間です。

ただし、例外的にこの期間が10年に短縮される場合があります。

それは、通行を開始した時点で、その土地が他人の土地であると知らず、かつ、そう信じることに落ち度がなかった場合(法律上「善意無過失」といいます)です。

例えば、親の代から自分の土地の一部だと説明されて信じ込んでいたようなケースが該当します。

ご相談のケースでは30年以上通行を継続しているとのことですので、原則である20年という期間の要件は十分に満たしていると考えられます。

通行地役権を時効取得するための4つの重要要件

通行地役権を時効によって取得するためには、満たすべき明確な要件があります。

中でも最も重要なのが、ご自身の費用と労力で通路を開設し、維持管理してきたという客観的な事実です。

これから、時効取得に不可欠な4つの要件を一つずつ詳しく解説します。

ご自身のこれまでの状況と照らし合わせながら、確認していきましょう。

これらすべての要件を満たすことで、長年利用してきた大切な通路の権利を法的に主張できる道が開けます。

要件1、自己の費用と労力による通路の開設

これが時効取得における最も重要なポイントです。

判例では、通行権を主張する人が、自らの費用と労力で通路を開設・維持管理してきた事実が厳しく求められます。

例えば、30年前にご自身で砂利を敷き、その後も年に2回は草刈りを続けてきたといった主体的な行動が必要です。

単に他人の土地を通行していただけでは、残念ながら時効取得は認められません。

通路の舗装や側溝の設置、定期的な清掃など、その通路を維持するために積極的に関わってきたかどうかが問われます。

要件2、一定期間の継続した通行

時効取得が認められるためには、一定の期間、継続して通路を利用している必要があります。

この期間は、原則として20年間です。

ただし例外として、通行を始めたときに、その土地が他人の土地であると知らず、そう信じることに落ち度がなかった場合(善意無過失といいます)は、期間が10年に短縮されます。

親の代からの利用期間も合算できるため、長年にわたる通行の事実は、権利を主張する上で大きな強みとなります。

要件3、平穏かつ公然の状態での利用

長期間の通行が、穏やかに行われていたことも要件の一つです。

ここでいう「平穏」とは、土地の所有者から暴力的な妨害を受けたり、通行をめぐって常に争いが起きたりしていなかった状態を指します。

また、「公然」とは、こっそりと隠れて通行していたわけではなく、誰が見てもわかる形で堂々と利用していた状態を意味します。

先代の所有者と良好な関係を保ち、日常的に挨拶を交わしながら通行していたような状況であれば、この要件は満たしていると考えられます。

要件4、時効の利益を受ける意思表示(援用)

時効期間の20年(または10年)が経過しても、権利は自動的に発生しません。

権利を取得するためには、時効によって権利を取得するという意思を相手方に伝える「援用(えんよう)」という手続きが必要です。

援用の方法に決まった形式はありませんが、後々のトラブルを防ぐため、配達証明付きの内容証明郵便で行うのが一般的です。

新しい土地の所有者に対して「通行地役権を時効取得したので、今後も通行します」と明確に意思表示することで、初めて権利が法的に確定します。

時効取得が認められやすい行動の例

裁判などで時効取得を主張する際には、客観的な証拠が重要になります。

以下のような行動は、通路への主体的な関与を示すものとして、権利が認められやすくなる要素です。

これらの行動は、単なる通行者ではなく、通路の維持管理者として責任を果たしてきたことの証明となります。

時効取得が認められない場合の事例

一方で、長年通行していても、以下のようなケースでは時効取得が認められない可能性が高まります。

状況によっては権利の主張が難しくなるため、ご自身のケースが当てはまらないか確認しましょう。

これらの場合、権利の行使ではなく、土地所有者の厚意や契約に基づいて通行していたと判断されるため、時効取得の成立は困難です。

時効取得を主張するための手続きと注意点

時効取得の要件を満たしているだけでは、自動的に権利が認められるわけではありません。

ご自身の権利を法的に確定させ、将来にわたって安心して通路を利用するためには、然るべき手続きを正しい順序で進めることが何よりも重要です。

手続きを進めるにあたり、しばしば比較される「囲繞地通行権」との違いを理解しておくと、ご自身の状況でどちらを主張すべきか判断しやすくなります。

これらの手続きや権利関係は複雑なため、お一人で抱え込まず、早い段階で専門家に相談することが、円満な解決への近道となります。

まずは客観的な証拠の収集から

通行地役権の時効取得を主張する上で、すべての基礎となるのが客観的な証拠です。

長年通行してきたという記憶だけでは、法的な主張の根拠としては不十分といえます。

例えば、20年以上にわたってご自身の費用で通路の維持管理を行ってきた事実を証明できる資料を集める必要があります。

これは後の交渉や裁判において、ご自身の主張を裏付けるための強力な武器となります。

これらの証拠を時系列に沿って整理しておくことで、土地の所有者や裁判官に対して、権利を主張する正当性を説得力をもって伝えられます。

土地の所有者との交渉と合意による登記

客観的な証拠が揃いましたら、まずは土地の所有者との話し合いによる解決を目指すのが基本的な進め方です。

裁判は、あくまで最終手段と考えるのがよいでしょう。

交渉の際は感情的になるのを避け、収集した証拠を示しながら、通行地役権が時効によって成立している事実を冷静に伝えます。

もし相手方が事実を認め、年間数十万円かかることもある弁護士費用や裁判の長期化を避けたいと考えれば、合意に至る可能性は十分にあります。

合意できた場合は、「通行地役権設定契約書」などの書面を作成し、法務局で共同して登記手続きを行います。

円満な話し合いによって合意と登記ができれば、時間や費用を最小限に抑えつつ、将来にわたる安定した通行権を確保できます。

交渉がまとまらない場合の裁判手続き

当事者間での交渉が決裂してしまった場合には、裁判手続きによって権利の確定を目指すことになります。

具体的には、地方裁判所に「通行地役権確認等請求訴訟」などを提起します。

裁判では、原告であるあなたが、時効取得の4つの要件(自己の費用による通路の開設・維持、一定期間の継続、平穏・公然、援用)をすべて満たしていることを、証拠に基づいて主張・立証する必要があります。

相手方からは、「そもそも通路の維持管理はしていない」「時効の進行を中断させる出来事があった」といった反論が出てくることが予想されます。

訴訟手続きは法律の専門知識が不可欠となるため、通常は弁護士に代理人を依頼します。

判決で通行地役権の時効取得が認められれば、その判決書をもって単独で登記手続きを進めることが可能です。

新しい所有者へ権利を主張するための登記の必要性

時効によって通行地役権を取得したとしても、その権利を登記していなければ、その後に土地の所有権を取得した第三者に対しては権利を主張できません

これは、ペルソナの方のように、土地が売却されて所有者が変わった場合に極めて重要な点です。

不動産の権利変動は、登記を備えることで初めて当事者以外の第三者にも主張できる、というのが日本の法律(民法177条)のルールです。

たとえ何十年と通路を利用し、時効取得の要件を完全に満たしていても、登記という公的な証明がなければ、新しい所有者から「私は前の所有者から何も聞いていないので、通行は認めません」と言われてしまうと、法的には弱い立場に置かれます。

将来のトラブルを未然に防ぎ、ご自身の権利を盤石なものにするためにも、所有者との合意や裁判所の判決によって権利が確定した後は、速やかに通行地役権設定登記を申請することが不可欠です。

似ている権利「囲繞地通行権」との相違点

通行地役権とよく似た権利に「囲繞地(いにょうち)通行権」があります。

これは、他の土地に囲まれて公道に通じない土地(袋地)の所有者が、公道に出るために周囲の土地を通行できる、法律上当然に認められた権利です。

通行地役権との最も大きな違いは、囲繞地通行権はあくまで必要最小限の通行が認められる権利という点です。

そのため、通行の場所や方法は、周囲の土地の所有者にとって最も損害の少ないものが選ばれます。

また、原則として通行する側は土地の所有者に対して、償金(通行料)を支払う義務を負います。

これに対し、時効取得した通行地役権は、実際に長年利用してきた範囲を通行でき、通行料を支払う義務もありません。

所有している土地が袋地にあたる場合は、まず囲繞地通行権を主張しつつ、より有利な通行地役権の時効取得も合わせて主張していく、という戦略が考えられます。

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不動産トラブルに強い専門家への相談

ここまで見てきたように、通行地役権の時効取得を主張する手続きは、法的な知識と適切な対応が求められます。

そのため、問題が複雑になる前に、不動産トラブルに強い専門家へ相談することが解決への最も確実な一歩です。

どの専門家に相談すべきかは、状況によって異なります。

登記手続きが中心であれば司法書士、相手方との交渉や訴訟まで見据えるのであれば弁護士が適任となります。

多くの場合、初回の相談は無料または比較的安価で応じてもらえます。

ご自身の状況を説明し、今後の見通しや必要な費用についてアドバイスを受けるだけでも、大きな安心感が得られます。

ご自身の正当な権利を守り、平穏な生活を取り戻すために、ぜひ専門家の力を活用してください。

よくある質問(FAQ)

Q
親の代からの通行期間も、時効取得の期間に含めることはできますか?
A

はい、ご自身の利用期間と親の代からの利用期間を合わせて主張できます。

民法では、前の所有者(この場合は親御様)の占有期間を引き継ぐことが認められているからです。

例えば、親御様が15年間、ご自身が5年間通行していれば、合計で20年間の要件を満たします。

親の代から長年通路を維持管理してきた事実は、時効取得を主張する上で強力な根拠になります。

Q
どの程度の行為が「自己の費用による通路の維持管理」と認められますか?
A

裁判の判例で重視されるのは、通行する人が主体的に通路の維持に費用や労力をかけてきたか、という客観的な事実です。

例えば、定期的な草刈りや砂利の補充、ご自身の費用でのアスファルト舗装などが典型例です。

単に自然にできた道を通っていただけでは認められず、誰が見てもわかる形で通路の開設や維持管理に関わってきたと証明することが権利の主張につながります。

Q
先代の地主さんとの口約束だけでは、通行を主張できないのでしょうか?
A

当事者間の口約束も契約としては有効ですが、土地が売却されて所有者が変わった場合、新しい所有者(第三者)に対してその約束を主張することは困難です。

不動産の権利は、登記をしなければ第三者に対抗できないのが原則だからです。

そのため、将来のトラブルを避けるためにも、通行地役権を時効取得し、その権利を法務局で登記することがご自身の権利を守る上で非常に重要になります。

Q
時効取得した通行の権利が、将来なくなってしまうことはありますか?
A

はい、取得した通行地役権にも消滅時効があります。

権利を行使できる時から20年間、全く権利を行使しないと時効によって権利が消滅する可能性があります。

ただし、通路として利用し続けたり、舗装された状態を維持したりしていれば、権利を行使していると見なされるため、通常は心配ありません。

権利取得後も、通路としての状態を維持していくことが大切です。

Q
新しい地主から「通行料を払うなら通っていい」と言われました。支払うべきですか?
A

通行地役権の時効取得の要件を満たしている場合、あなたには無償で通行する権利があるため、通行料を支払う義務はありません。

もし相手との交渉が難しい場合は、その旨を明確に主張することが必要です。

ただし、ご自身の土地が公道に出られない袋地である場合、囲繞地通行権という別の権利も考えられ、この場合は通行料の支払い義務が生じるのが原則です。

Q
弁護士や司法書士には、どのタイミングで相談するのがよいですか?
A

土地の所有者から通行を拒否されるなど、具体的なトラブルが発生した時点ですぐに相談することをおすすめします。

専門家に相談することで、ご自身の状況で時効取得が主張できるかの見通しが立ち、適切な対応策がわかります。

相手方との交渉から依頼したい場合は弁護士、登記手続きを依頼したい場合は司法書士が適任です。

初回相談を無料で実施している事務所も多くあります。

まとめ

この記事では、長年利用してきた通路の通行権を「通行地役権」として時効取得するための、具体的な4つの要件と手続きを解説しました。

時効取得を認めてもらうために最も重要なのは、ご自身の費用と労力で通路を開設し、主体的に維持管理してきたという客観的な事実です。

ご自身の状況で権利を主張できるか判断に迷う場合は、まずは通路を維持管理してきた証拠を集め、お早めに弁護士や司法書士といった専門家へ相談することをおすすめします。

わかりにくい場合は無料相談もあります

当社及び協力各社(東京・愛知・大阪・沖縄)では、「忙しくて調査できない」「自分で調査すると抜け漏れが心配」という方のために、無料相談サービス(初回60分無料)を用意しています。無料サービスだけでも問題が解決することもありますので、お気軽にご利用ください。

本格的な調査は別途見積りとなりますが、売却の仲介をご依頼いただいた場合は最後まで調査料は原則無料です。

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