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【判例で解説】通行地役権の登記なし!新所有者に対抗できる?

トラブル対策

隣地の所有者が変わり「今まで使っていた通路が使えなくなる…」という事例もあります。

通行地役権は原則として登記がなければ、土地の新しい所有者に権利を主張できないからです。

ただし、特定の条件を満たせば例外的に権利が認められる判例も存在します。

この記事では、登記なしで通行地役権を新しい所有者に対抗するための3つの条件を判例に基づいて解説し、類似の権利である囲繞地通行権との違いや、将来の紛争を未然に防ぐ方法をわかりやすくお伝えします。

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通行地役権は登記なしでは第三者に対抗できないという原則

長年当たり前に使ってきた通路でも、その権利を法務局に登記していなければ、土地の新しい所有者に「通る権利がある」と主張することは原則としてできません。

これが不動産取引における大原則です。

なぜなら、不動産の権利は登記によって社会に公示され、第三者が見ても権利関係がわかる状態にしておくことが何よりも重要だからです。

この章では、通行地役権という権利を守るために、なぜ登記という手続きが不可欠なのか、その法的な理由をわかりやすく解説します。

なぜ不動産の権利には登記が必要なのか

登記とは、不動産の戸籍のようなもので、その土地や建物について誰がどのような権利を持っているかを社会に示す公的な記録です。

この登記制度があるおかげで、私たちは安心して不動産の取引ができます。

例えば、あなたが1億円の土地を購入したとします。

もし登記制度がなければ、後から「その土地は本当は私のものだ」と主張する人が現れるかもしれません。

そうなると、どちらが本当の所有者か証明できず、取引の安全が根底から覆ってしまいます。

登記は、そうした混乱を防ぎ、権利関係を明確にするために不可欠な仕組みなのです。

権利を主張するための「対抗要件」としての登記

法律の世界では、登記のことを「対抗要件」と呼びます。

これは、契約を結んだ当事者同士以外の第三者に対して、自分の権利を法的に主張するために必要となる条件という意味です。

民法という法律では、不動産に関する権利の変動は「登記をしなければ、第三者に対抗することができない」と定められています。

これは不動産取引における重要なルールであり、先に契約したとしても、登記を先に完了させた人が権利を主張できるのが原則です。

通行地役権も不動産に関する権利の一つですから、このルールに従うことになります。

当事者間の合意だけでは通用しない現実

「前の所有者とは口約束で通行を認めてもらっていた」というケースは少なくありません。

もちろん、その約束(契約)は、約束を交わした当事者の間では有効です。

しかし、その土地が売買などによって第三者の手に渡った場合、新しい所有者はその約束の当事者ではありません。

そのため、新しい所有者から「前の所有者との約束は私には関係ありません。

登記がない以上、あなたの通行は認めません」と言われてしまうと、法的に反論するのはとても難しくなります。

こうした事態を防ぐために、当事者間の合意を第三者にも主張できる「登記」という手続きが必要になるのです。

【判例】登記なしで新所有者に対抗するための3つの条件

原則として通行地役権は登記がなければ新しい所有者に主張できませんが、裁判で例外的に権利が認められたケースもあります。

その際に最も重要なポイントは、土地の所有者が変わる原因によって判断の基準が異なるという点です。

自分の置かれている状況がどれに当てはまるのか、以下の条件と照らし合わせて確認することが第一歩です。

条件1-継続的な利用が客観的に明らかな状態

例外が認められるための最初の条件は、誰が見てもそこが通路として使われていると分かる物理的な状況であることです。

これを「客観的要件」と呼びます。

【判例】最高裁判所 第一小法廷 昭和45年9月21日判決 通行地役権の承役地(通行される側の土地)の譲受人が、その譲渡の時に、当該地役権が設定されていることを知らなかったとしても、「承役地の上に通路が設置されているなど、地役権の存在が客観的に明らかであるとき」は、登記がなくても譲受人に対抗できると判示。

例えば、長年にわたる通行によって道が踏み固められているだけでなく、コンクリートで舗装されていたり、砂利が敷き詰められていたりするなど、恒久的な設備が整っている状態がこれに該当します。

単に草が刈られている、人が歩いた跡があるという程度では、継続的な利用が客観的に明らかとは認められない可能性が高いです。

条件2-新所有者が通路の存在を認識できたこと

もう一つの条件は、新しい所有者が、その土地に通路があることを知っていたか、もしくは通常の注意を払えば知ることができた状態であることです。

これを「主観的要件」と呼びます。

例えば、土地の売買契約前に現地を訪れた際に、明らかに車が通れるような舗装された通路があれば、通常はその存在に気づきます。

たとえ売主からの説明がなかったとしても、「現地を見れば通路があることは分かったはずだ」と判断され、「知らなかった」という言い分は認められないケースが多いです。

条件3-土地の取得原因で変わる判断のポイント

これまで説明した2つの条件に加えて、土地の所有権がどのように移転したか(売買・相続・競売)によって、権利を主張できるかどうかの判断基準が変わる点も、非常に重要なポイントです。

なぜなら、所有者が変わった原因によって、通行地役権の権利関係を判断する「基準となる時点」と「相手方の立場」がそれぞれ異なるからです。

そのため、ひとくくりに「新しい所有者」と考えるのではなく、原因別に分けて考える必要があります。

売買における最高裁の判断基準

一般的な土地の「売買」によって所有者が変わった場合、判断の基準となるのは土地が譲渡された時点になります。

【判例】最高裁判所 第二小法廷 平成10年2月13日判決 承役地の譲渡時において、地役権が継続的に行使され、かつ、その存在が外形上客観的に明白である場合には、譲受人が地役権の存在を認識していなくても(または認識可能であれば)、地役権者は登記なくして対抗できると判示。

平成10年2月13日の最高裁判所の判例では、土地の譲渡時に「条件1:継続的な利用が客観的に明らかな状態」であり、かつ「条件2:新所有者がその状況を認識できた」場合には、登記がなくても通行する権利を主張できると示しました。

これは、通路の存在を知りながらその土地を購入した人が、後から「登記がないから」と通行を拒否するのは信義に反するという考え方に基づいています。

相続なら登記なしでも権利は引き継がれる

「相続」で所有者が変わる場合、状況は売買と大きく異なります。

相続人は、亡くなった方(被相続人)の財産に関する権利や義務をすべてそのまま受け継ぎます

そのため、被相続人が生前に通行地役権の設定に合意していた場合、相続人もその合意を引き継ぐことになります。

この場合、相続人は売買における「第三者」とは立場が異なるため、登記がなくても通行する権利を主張することが可能です。

競売で重要となる抵当権設定時の状況

土地が「競売」にかけられ、新しい所有者(競落人)に変わった場合は、最も判断が厳しくなります。

なぜなら、判断の基準となる時点が、競売の時ではなく「一番初めに抵当権が設定された時」まで遡るからです。

【判例】最高裁判所 第三小法廷 平成25年2月26日判決 土地の競落人に対し、登記のない通行地役権を対抗するためには、「抵当権設定時」において、通路が客観的に明らかであり、かつ「抵当権者」が地役権があることを知っていたか、知ることができた状況である必要があるとされた。

最高裁判所は平成25年2月26日の判決で、競落人に対抗するためには、①一番初めの抵当権が設定された時点で通路の利用が客観的に明らかで、②抵当権者(お金を貸した金融機関など)がその状況を認識できたこと、という2つの条件が必要だとしました。

これは、金融機関が融資の際に土地の価値を評価した時点の状況を基準とすべき、という考え方に基づきます。

登記がないことで起こる紛争と類似する権利との違い

登記という公的な証明がない状態は、当事者の認識の違いや誤解を生む温床となります。

特に、土地の所有者が変わったタイミングで、これまで問題にならなかったことが大きな紛争に発展するケースは少なくありません。

ここでは、登記がないことで起こりがちな典型的なトラブルと、混同されやすい「囲繞地通行権」との違いを解説します。

新所有者による通路の封鎖や通行料請求といったトラブル

これまで良好な関係で無償で使わせてもらっていたとしても、それはあくまで前の所有者との合意に過ぎません。

土地の所有者が代わることで、その関係性がリセットされてしまうのが、登記のない通行地役権が抱える最大のリスクです。

ある日突然、新しい所有者から「この土地は私が買ったのだから、今日から通らないでほしい」と告げられ、通路にフェンスを設置されてしまうことがあります。

また、通行自体は認めるものの、「今後は月々〇万円の通行料を支払ってください」と、これまで発生しなかった金銭を要求されるケースも考えられます。

このような事態に陥ると、感情的な対立に発展しやすく、穏便な解決が難しくなってしまうのです。

売主から説明不足だった場合の購入者との対立

トラブルは、通路の利用者と新所有者の間だけで起こるわけではありません。

新所有者が、土地の売買契約時に売主から通路の存在について十分な説明を受けていなかった場合、問題はさらに複雑化します。

新所有者からすれば「通路の負担があるなんて聞いていない。

そんな土地ならこの価格では買わなかった」と、売主に対して不満を抱くのは当然です。

この状況は、通路の利用者、新所有者、売主の三者を巻き込む紛争へと発展する可能性があります。

不動産取引の専門家である宅地建物取引業者が仲介していても、現地調査が不十分な場合、こうしたトラブルは見過ごされがちです。

結局、誰もが不幸になる結果を招いてしまいます。

法律で認められる囲繞地通行権との明確な相違点

通行に関する権利として、通行地役権とよく混同されるのが「囲繞地(いにょうち)通行権」です。

これは、他の土地に囲まれて公道に出られない土地(袋地)の所有者に、法律の規定によって当然に認められる権利を指します。

通行地役権が当事者間の契約によって成立するのに対し、囲繞地通行権は袋地であれば合意がなくても発生する点で根本的に異なります。

しかし、囲繞地通行権で認められるのは、あくまで公道に出るための必要最小限の範囲に限られ、原則として通行料を支払う義務が生じます。

両者の違いを正しく理解しておくことが重要です。

ご自身の土地が袋地ではない場合、囲繞地通行権を主張することはできません。

安易に「法律で認められているはずだ」と思い込まず、自身の権利がどちらに該当するのかを冷静に見極める必要があります。

将来の不安を解消する最も確実な紛争予防策

これまでに解説したように、登記のない通行地役権を新しい土地の所有者に主張するには、厳しい条件を満たす必要があります。

裁判で権利が認められる可能性はゼロではありませんが、多大な時間と費用、そして精神的な負担がかかります。

将来にわたる不安をなくし、安心してその土地を使い続けるためには、当事者間の合意を書面にし、法務局で登記手続きを行うことが最も確実で最善の方法です。

この章では、将来のトラブルを未然に防ぐための具体的なステップを解説します。

通行範囲や対価を定めた地役権設定契約書の作成

まず取り組むべきことは、当事者間の合意内容を明記した「地役権設定契約書」を作成することです。

「言った、言わない」のトラブルを防ぐため、口約束ではなく必ず書面で残すことが重要になります。

この契約書は、後に行う登記申請の基礎となる大切な書類です。

契約書には、例えば「通路の幅は2.5メートルとし、普通自動車の通行を認める」「通行料は無償とする」といったように、お互いが納得した内容を具体的に記載します。

誰が見ても権利の内容が明確にわかるように、詳細な条件を取り決めておきましょう。

この契約書を公正証書にしておくと、さらに証明力が高まります。

権利を確定させる地役権設定登記の手順

契約書を作成したら、次はその内容を法務局に届け出て権利を確定させる手続きに進みます。

これが「地役権設定登記」であり、この手続きによって権利を第三者に対して公式に主張できるようになります。

登記手続きは専門的な知識が必要なため、司法書士に依頼するのが一般的です。

登記申請から完了までにかかる期間は、書類に不備がなければ通常1週間から2週間程度です。

登記が完了すると、法務局から登記識別情報通知書が発行され、手続きは終了します。

この登記を済ませておけば、将来、隣の土地が売買や相続で誰の手に渡ったとしても、あなたは正当な権利者として堂々と通路を使い続けることができます。

地役権設定登記にかかる費用の目安

地役権設定登記には、いくつかの費用が発生します。

これは将来の安心を手に入れるための大切な投資と考えることができます。

主な費用は、国に納める税金である「登録免許税」と、専門家である「司法書士への報酬」です。

費用の総額はケースバイケースですが、大きな目安として覚えておくとよいでしょう。

登録免許税は承役地である土地1筆につき1,500円と定められています。

司法書士への報酬は、依頼する事務所や案件の複雑さによって異なりますが、おおむね3万円から9万円程度が相場です。

合計すると10万円前後の費用がかかる可能性がありますが、この一度の手続きで永続的な権利と安心が得られることを考えれば、十分に価値のある費用といえます。

話し合いが難しい場合の司法書士への相談

ここまでの手順は、隣地の所有者と円満に話し合いができることが前提です。

もし相手との交渉がうまくいかない、あるいは感情的な対立になりそうだという場合は、迷わず専門家である司法書士に相談してください。

当事者同士でこじれてしまう前に、法律の専門家を間に入れることが円満な解決への近道となります。

司法書士は、登記手続きの代理人というだけでなく、あなたの状況を法的な観点から整理し、相手方への説明や交渉のサポート、適切な契約書案の作成など、問題解決のために幅広く動いてくれます。

中立的な第三者が入ることで、相手方も冷静に話を聞き入れやすくなる効果も期待できるのです。

権利関係が曖昧なまま不安を抱え続けるのではなく、まずは専門家に相談し、問題を解決するための第一歩を踏み出すことが大切です。

よくある質問(FAQ)

Q
通行地役権は時効取得できますか?
A

はい、一定の条件を満たせば時効取得が可能です。

自分のために通路を開設し、舗装するなど、継続的に通路として使用している意思が客観的に明らかな状態で10年または20年間、平穏かつ公然と通行を続けることで権利を取得できます。

ただし、単に他人の土地を通行しているだけでは時効取得の主張は認められません。

この権利を第三者に対抗するためには、時効取得を原因として地役権設定登記が必要です。

Q
新所有者が通路の存在を「知らなかった」と主張したら対抗できませんか?
A

いいえ、必ずしもそうとは限りません。

たとえ新所有者が「知らなかった」と主張しても、土地の売買の時点で、通路が舗装されているなど客観的に誰が見ても継続的な利用が明らかな状態であれば、通常の注意を払えば認識できたと判断されます。

このような状況で登記がないことだけを理由に通路の利用を拒むことは、信義則に反する「背信的悪意者」と見なされ、権利濫用として認められないという最高裁の判例があります。

Q
登記なしでも地役権設定の契約書があれば安心ですか?
A

契約書があるだけでは十分な安心は得られません。

地役権設定契約書は、あくまで契約した当事者間での約束事を証明するものです。

その土地が売買や競売によって第三者の手に渡った場合、新しい所有者に対してその権利を主張(対抗)するための法的な効力を持つのが地役権設定登記です。

将来の紛争を確実に予防するためには、契約書の作成と登記の両方を完了させることが不可欠な対抗要件となります。

Q
親の代からの口約束しかない場合、今から何をすべきですか?
A

まず、現在の隣地の所有者(承役地の所有者)と話し合いの場を持つことが重要です。

これまでの経緯を丁寧に説明し、将来にわたって安心して通行できるよう、地役権設定契約書の作成と地役権設定登記の手続きに協力してもらえないかお願いしましょう。

もし当事者同士での話し合いが難しい場合は、不動産の専門家である司法書士に相談してください。

専門家が間に入ることで、円満な解決に向けた交渉が進みやすくなります。

Q
地役権設定登記の費用はどちらが負担するものですか?
A

地役権設定登記にかかる費用負担について、法律上の明確な決まりはありません。

そのため、権利を得る側(要役地の所有者)と、土地の利用を認める側(承役地の所有者)との話し合いによって決めます。

一般的には、通行の便益を受ける要役地の所有者が、登録免許税や司法書士への報酬といった費用の全額を負担するケースが多いです。

費用の負担についても、作成する契約書に明記しておくと将来のトラブル予防になります。

Q
囲繞地通行権との違いがよくわかりません。どう確認すればよいですか?
A

ご自身の土地の状況を法務局で公図を取得して確認することが第一歩です。

公図を見て、自分の土地が完全に他人の土地に囲まれていて公道に一切接していない「袋地」の状態であれば、囲繞地通行権を主張できる可能性があります。

一方で、公道に接しているものの、利便性のために他人の土地を通行させてもらっている場合は通行地役権の問題となります。

この二つの権利は発生の根拠が全く異なるため、正確な土地の状況を把握することが重要です。

まとめ

この記事では、登記がない通行地役権を土地の新しい所有者に主張するための例外的な条件を、判例をもとに解説しました。

ご理解いただきたい最も重要なポイントは、通行地役権は原則として登記がなければ第三者に対抗できないという事実です。

もしあなたが登記のない通路のことで不安を感じているのであれば、まずは現在の隣地所有者と話し合いの場を持つことを検討しましょう。

当事者同士での交渉が難しい場合は、専門家である司法書士に相談することが、問題を解決し安心を得るための第一歩となります。

わかりにくい場合は無料相談もあります

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