私道とは? 公道との違いと「買う」「売る」前に確認しておきたいリスクヘッジ

私道とは、個人や法人が所有・管理する道路のことです。ただし、「所有者が誰か」だけを確認しても、不動産売買の判断を下すには情報不足です。本当に重要なのは、①その私道が建築基準法上の道路として認められているか、②通行・掘削・売却で問題が起きない状態かどうかです。

そこで、この記事では私道の基本的な意味から、買う・売る・建て替えるときに確認しておきたいリスクまでを整理します。各論点の詳細は、内部リンク先の記事でご確認ください。

制作・監修者について
アップライト合同会社の編集部が制作(監修は宅地建物取引士・立石秀彦)。不動産の調査・マーケティングを専門とし、複数の不動産メディアを運営しています。

目次

私道と公道の違い

私道と公道は、所有者と管理責任が違います。

公道は、国・都道府県・市区町村が所有する道路です。国道、県道、市道などが該当します。舗装補修や清掃は行政の責任で行われ、誰でも自由に通行できます。

私道は、個人や法人が所有する道路です。法律上の用語ではなく、「公道ではない道路」全般を指します。維持管理の責任と費用は、所有者が負います。

私道と公道の見分け方について、詳しくは以下の記事で解説しています。

あわせて読みたい
私道と公道の見分け方|Googleマップで分かるはウソです 私道と公道は、見た目やGoogleマップの色だけでは正確に見分けられません。まず市区町村の道路台帳・指定道路図で「公道や建築基準法上の道路か」を確認し、次に法務局...

私道と公道は、見た目では区別がつかない、という点が重要です。

近所の生活道路が実は私道だった、というケースは珍しくありません。Googleマップでは判断できません。舗装状態も関係ありません。

確認するには、法務局の公図・登記事項証明書、あるいは市区町村の道路台帳で調べる必要があります(調査方法は後述します)。

「所有者が誰か」と「建築できるか」は別の問題

ここが、私道を理解するうえで最も重要な点です。

私道かどうかは、所有者が誰かという話です。一方、その土地に建物を建てられるかどうかは、建築基準法上の道路かどうかという別の話です。

建築基準法第43条では、都市計画区域内に建物を建てるには、幅員4m以上の建築基準法上の道路に、2m以上接していることが必要とされています(接道義務)。この条件を満たさない土地には、原則として建物を新築することも、建て替えることもできません。いわゆる再建築不可物件です。

「私道だから建築不可」とは限らない、という点も押さえておく必要があります。

私道であっても、建築基準法上の道路として認定されていれば、建物を建てることができます。逆に、きれいに舗装された立派な道路でも、認定を受けていない「単なる通路」であれば接道義務を満たしません。

建築基準法が認める主な私道は、次の3種類です。

種類条文特徴
位置指定道路42条1項5号宅地開発時に整備され、行政から指定を受けた私道。幅員4m以上
みなし道路(二項道路)42条2項建築基準法施行前から存在した幅員4m未満の道。建て替え時にセットバック(道路後退)が必要
既存道路42条1項3号建築基準法施行前から存在した幅員4m以上の道

※ただし、みなし道路と既存道路には、所有者が市町村等の公道の場合と、私道の場合が混在しています。

位置指定道路は私道で、市町村等による認定をうけたもの(建築基準法第42条第1項第5号)。

あわせて読みたい
位置指定道路とは何かをわかりやすく解説|調査方法と注意点 位置指定道路とは、建築基準法第42条1項5号に基づき、特定行政庁(都道府県知事や市町村長)から指定を受けた私道です。 位置指定を受けることにより、私道でありながら建...

みなし道路には昔からある狭い里道や村道などが指定されているケースも多いのですが、生活道路となっていた私有地の場合があります。どちらも、二項道路に認定されていれば建築が認められる可能性があります。

あわせて読みたい
二項道路(みなし道路)とは?セットバックの仕組みから役所調査法まで 二項道路(みなし道路)とは?セットバックの仕組みから役所調査法まで 二項道路とは、幅4m未満でありながら、建築基準法上の道路として認められた道路のことです。正式...

既存道路とは、建築基準法が施行された時(昭和25年)にすでに幅員が4m以上あった道で、こちらも公道と私道が今罪しています(第42条第1項第3号など)。

あわせて読みたい
【3分解説】既存道路とは|建築基準法42条1項3号道路の定義と調査方法 家の建て替えを考えたとき、目の前の道路が原因で「再建築不可」になるとしたら……? エリアによっては古い道、細い道も多く、そんな心配も頭をよぎります。 住宅の建て...

このように見ていくと、誰が所有するか(公道か私道か)と、建築が認められるか(建築基準法上の道路に該当するか)は別の問題だとわかります。

とくに、みなし道路や既存道路には、公道も私道も混在しています。

ですから、「家を建てられるのかどうか」を調べる場合は、「建築基準法上の道路と認められているか」を見るようにしてください。

私道の所有形態

私道の所有形態は主に3つです。どの形態かによって、売却のしやすさやトラブルのリスクが変わります。

単独所有

一人の個人や法人が私道全体を所有する形態です。所有者ひとりの意向だけで、色々なことを決定できます。逆に所有者以外の立場で考えると、通行料の請求、掘削工事の拒否といったトラブルリスクが最も高いのがこのタイプです。

共有(共同所有型)

私道に面する複数の土地所有者が、持分割合に応じて共有する形態です。全員が所有者になるため、通行や掘削の権利は比較的問題になりにくいパターン。不動産売却時も、買主や金融機関の不安は抑えられます。ただし、お金がかかる大規模修繕の際には、全員の合意が取れずに難航する場合があります。

相互持合型

私道を物理的に分筆し、各所有者が自分の敷地前の部分をそれぞれ単独で所有する形態です。管理責任の範囲は明確ですが、公道に出るには他人の所有部分を通行しなければなりません。掘削工事では個別の承諾が必要になるため、近隣関係が悪化すると深刻なトラブルになりやすいという問題点もあります。

持ち分がない場合は売買に支障も…

持分がないケースについて補足します。

自分が持分を持っていない私道に面した物件の場合、売却時に不利になることがあります。買主が住宅ローンを申し込むと、金融機関が「通行・掘削承諾書がない」という理由で融資に慎重になるケースがあります。

売主の対応としては、売却前に私道所有者から通行・掘削承諾書を取得しておくことが望ましいです。

ただし、2023年4月の改正民法で設備設置権が認められ、私道持分を持たない土地所有者でも、電気・ガス・水道・通信回線などの引き込みに必要な範囲で、他人の土地を使用して設備を設置・使用できる根拠が明文化されました(民法第213条の2)。詳しくは以下の記事でご確認ください。

あわせて読みたい
民法改正で私道持分なしでも工事可能?|インフラ設置の3つの要点 私道持分なしであっても、ライフライン工事や売却、そして条件次第では再建築まで、不可能とはいいきれません。 具体的には、2023年4月施行の改正民法で新設された民法...

私道に関わる5つのリスク

私道が絡む不動産で起きやすい問題を、5つに整理します。

1. 通行できるか

私道は個人の財産です。法的な通行権がない場合、所有者が変わった際に通行を妨げられるリスクがあります。

袋地(公道に直接接していない土地)には、民法上「囲繞地通行権(いにょうちつうこうけん)」が認められています。ただし、通行できる範囲は最小限ですし、通行料(償金)の支払い義務が生じる場合があります。

あわせて読みたい
囲繞地通行権とは?袋地の所有者が知るべき民法の3つの要件 ご自身の土地が公道に通じておらず、将来隣地を通れなくなるのではと不安に感じていませんか。 安心してください、袋地の所有者には、隣地を通行できる「囲繞地通行権」...

位置指定道路のような建築基準法上の道路は、通行を妨げる物を置くことが法律で禁止されています。それ以外の私道では、書面による通行承諾書を取得しておくことが安全策です。

2. 掘削できるか

建物を新築・建て替えする際、水道・ガス・下水管を引き込むために私道を掘削することがあります。

2023年4月施行の改正民法で、ライフライン設置のための掘削は所有者の「承諾」ではなく「通知」で足りることになりました。ただし実務では、承諾書が取得されている物件のほうが、買主・金融機関ともに安心。できるだけ掘削承諾書を取っておくにこしたことはありません。

あわせて読みたい
民法改正で私道持分なしでも工事可能?|インフラ設置の3つの要点 私道持分なしであっても、ライフライン工事や売却、そして条件次第では再建築まで、不可能とはいいきれません。 具体的には、2023年4月施行の改正民法で新設された民法...

持分がない場合や承諾書がない場合は、売却前に状況を整理しておくことが重要です。

3. 維持管理費がかかるか

私道の補修・清掃・排水設備の管理は、所有者の責任で行います。共有の場合は、費用負担の割合を所有者間で取り決めておかないと、のちにトラブルになることがあります。

この点、多くの市区町村では私道の舗装工事費用の一部を助成する制度があります。費用の75〜90%程度を補助するケースもありますので、補修を検討している場合はまず役所の道路管理担当課に確認してください。

4. 固定資産税がかかるか

私道部分の固定資産税は、原則として所有者が負担します。

ただし、不特定多数が利用する公衆用道路として認定された場合、非課税または大幅に減免される自治体が多いです。これは自動的に適用されるものではなく、申請が必要な自治体もあるため、購入前に現状を確認してください。

5. 売却・住宅ローンで不利になるか

私道に面した物件は、次の条件が重なると売却が難しくなります。

  • 再建築不可(接道義務を満たしていない)
  • 通行・掘削承諾書がない
  • 私道持分がない、または権利関係が複雑

住宅ローンの審査でも、金融機関の評価が低くなりがちです。売却前に私道関係を整理しておくことで、査定価格や売り出し条件が改善することがあります。

私道かどうかを調べる方法

眼の前の道路が私道かどうかを調査する方法はいくつかあります。宅建士の実務では役所調査は必須ですが、簡易的に「急いで確認したい」という場合は、購入時の記録を見るのがいいでしょう。

不動産売買では、仲介会社が「重要事項説明書」を作成するのですが、私道負担の有無、面積、所有者の概要はここに記載されています。ただし、すべての情報が網羅されているとは限りませんし、役所の一次情報に比べると、間違いの可能性も気になります。

あわせて読みたい
私道と公道の見分け方|Googleマップで分かるはウソです 私道と公道は、見た目やGoogleマップの色だけでは正確に見分けられません。まず市区町村の道路台帳・指定道路図で「公道や建築基準法上の道路か」を確認し、次に法務局...

ネット上の指定道路地図で調べる

現在、特定行政庁(建築主事を置く市町村・都道府県)のうち、6割程度がネット上に指定道路地図を公開しています。この資料で確認すると、その道路が建築基準法上の道路に該当するかどうかを確認できます(私道か公道かは確認できない場合もあります)。

詳しくは、以下のページで国土交通省が公開している資料を見てみてください。

建築基準法上の道路情報の整備について|国土交通省

法務局で調べる(公図・登記事項証明書)

公図を取得し、道路部分に地番が付いているかを確認します。

  • 地番がある → 私道の可能性が高い
  • 地番がない、または「道」と表示されている → 公道や法定外公共物の可能性が高い

地番が確認できたら、登記事項証明書を取得します。所有者の氏名・名称、持分割合が確認できます。

公図・登記事項証明書は、法務局の窓口またはオンライン(登記情報提供サービス)で取得できます。

役所で調べる(建築指導課・道路管理課)

市区町村の建築指導課で、接している道路が建築基準法のどの条項に該当するかを確認します。

  • 「1項5号道路(位置指定道路)」か
  • 「2項道路(みなし道路)」か
  • いずれにも該当しないのか

この確認が、建て替えできるかどうかを判断する最も確実な手段です。みなし道路(2項道路)の場合は、セットバックが必要かどうかも同時に確認してください。セットバック部分は建築面積に算入できず、建ぺい率・容積率の計算にも影響します。

道路管理課では道路台帳を備えています。台帳に記載されていれば、自治体が認定した公道であることが確認できます。

あわせて読みたい
建築基準法上の道路の調べ方|再建築不可を避ける2つの調査方法と6つの道路種別 建築基準法第43条では「道路に二メートル以上接しなければならない」と定めており、その「道路」については、第42条で次のように定めています。 つまり、以下の各道路に...

私道付き物件を買ってよいケース・慎重に判断すべきケース

「私道だから避ける」というだけでは早計です。私道物件であっても買っていい場合もありますし、避けたほうがよい場合もあります。

以下のように切り分けるといいでしょう。

買ってよい可能性があるケース

  • 建築基準法上の道路として認定されている(再建築可能)
  • 私道持分があり、通行・掘削承諾書も整備されている
  • 共有型の私道で、近隣関係が良好
  • 価格が市場相場より安く、リスクとの差し引きで判断できる

私道に面した土地であっても、その私道が建築基準法条の道路として認定されている場合は建物を建てることができます。そのうえで私道持ち分があり、通行や掘削の権利が確保されているなら、購入しても問題ありません。

さらに、市場相場と比べてみて、お買い得感があれば購入を決めてもよいでしょう。

慎重に判断すべきケース

  • 建築基準法上の道路種別が不明、または認定されていない
  • 私道持分がなく、承諾書もない
  • 単独所有者が高齢・不在で、将来の交渉相手が不明確
  • 相続が繰り返され、権利関係が複雑化している

物件情報を検索していると、妙に安い土地・一戸建てが見つかることがあります。その場合、再建築が可能かどうかを確認してください。

より厄介なのは、私道の所有者が不明だったり、高齢で交渉できない場合。これは見ただけではわかりませんから、しっかりした不動産会社に調査してもらうか、場合によっては自分自身で「所有者は誰か」を調査・確認する必要があります。

専門家に相談したほうがいいケース

再建築可否が判断できない場合、掘削承諾書の取得が困難な場合は、宅建士や弁護士などに相談するのが確実です。

当社(アップライト合同会社)でも、初回60分の無料相談を受け付けています。売却の仲介をご依頼いただいた場合は、調査料は原則無料です。

無料相談はオンライン限定ですが、資料を整理しておいてもらえれば、無料相談だけでもある程度の切り分けが可能です。また、メールの場合は3往復まで無料で対応します。

私道に関するよくある質問

私道は勝手に通れますか?

所有者の許可がなければ、原則として通行はできません。

ただし、建築基準法上の道路として指定されている私道は、通行妨害が法律で禁止されています。

また、袋地の場合は囲繞地通行権が認められます。

私道でも建て替えできますか?

私道であっても、建築基準法上の道路(位置指定道路・二項道路・既存道路など)として認定されていれば、建て替えできる場合があります。

ポイントは、その敷地が建築基準法上の接道義務を満たしているかどうかです。

判断に迷う場合は、自治体の建築指導課で確認してください。

私道負担ありの物件は避けたほうがよいですか?

一概に避けたほうがよいとは言えません。

私道の持分があり、通行・掘削承諾書などが整備されていれば、実害は小さいケースもあります。

問題になりやすいのは、「再建築不可」「承諾書なし」「権利関係が不明」といった状態のときです。

私道の固定資産税は誰が払いますか?

私道の固定資産税は、原則として所有者が負担します。

共有の場合は、持分割合に応じて按分するのが一般的です。

ただし、公衆用道路として認定された私道は、非課税または減免になる場合があります。

自治体によっては申請が必要なため、固定資産税課などで確認してください。

通行・掘削承諾書がないと売れませんか?

通行・掘削承諾書がなくても、売れないわけではありません。

ただし、買主が住宅ローンを申し込む際に、金融機関が難色を示すことがあります。

売却前に承諾書を取得しておくと、売却価格や条件面での交渉が進めやすくなります。

私道と公道の見分け方を教えてください

私道と公道は、見た目だけでは判断できません。

法務局の公図で道路部分に地番があれば、私道の可能性が高いです。

それに対して、道路部分に地番がなければ、公道や法定外公共物の可能性があります。

最終的には、自治体の建築指導課や道路管理課で確認する必要があります。

まとめ:私道付き物件を確認するチェックリスト

購入・売却・建て替えの前に、次の点を確認してください。

  • 建築基準法上の道路として認定されているか(建築指導課)
  • 再建築が可能かどうか(接道義務を満たすか)
  • 道路の所有者と所有形態(法務局の登記事項証明書)
  • 私道持分があるかどうか
  • 通行・掘削承諾書が取得されているかどうか
  • 固定資産税の現状(課税・非課税、申請状況)
  • 維持管理費の負担ルールが決まっているかどうか
  • 過去に通行・掘削に関するトラブルがなかったか

私道のリスクは「通れるかどうか」だけではありません。掘削できるか、建て替えできるか、売却時に買主や金融機関が不安を持たないか——この3点で総合的に判断してください。

調査や判断に迷う場合は、私たちの無料相談を利用してください。

私道や再建築不可物件についての質問は、メールで3往復まで無料です。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

不動産SEOと宅地建物取引業を行う、アップライト合同会社の編集チーム。当サイトのほかに、トーマ不動産マガジン(トーマ不動産のオウンドメディア)、ウルズンMAGAZINE(ウルズンのオウンドメディア)およびクラシエステート公式サイトなどを運用しています。

コメント

コメントする

目次